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1.振り子は前を向いてゆれる「from scratch」



本夛マキの2nd album「from scratch」の全曲紹介を書き記してみようと思います。

曲の成り立ちや、レコーディングでの宝物のような時間の記憶を残しておきたい。


曲の解釈や印象は聴いてくださった人が自由に感じてほしい。

こういうものを書くのは野暮かもしれないけど、わたしは書いておきたい。


ここに書き残すのはわたしの記録です。


よかったらどうぞお付き合いください。



1.振り子は前を向いてゆれる


【曲の成り立ち】


こう、漠然と「振り子」をイメージしていたんです。

たぶん“境界線のメッセージ”という曲のおかげ(?)で反対にあるものが実は繋がっている、という考えを持ち続けていたんだと思います。


いいも悪いもぜんぶつながっていて、時にはあっちに振られたりこっちに揺らされたりと。

自分ではどうにもならないこともあるし。


生きることは振り子と似ているな、と思ったんです。


それでも、どんなときでも前を向いていたい、どんなふうにゆらされていても前を向くかは自分で選ぶことができる。

そしてできれば行きたい方向にゆれてみせるんだ、という決意を見つけたときにこの曲ができました。


わたしは「ああ…そうだよな」という気付きを曲にすることが多いです。

この“振り子は前を向いてゆれる”という曲ができたとき、とても安心しました。

生きる指針というか、そういう類の曲がまたできたんだとホッとした記憶があります。



【レコーディングの時間】


アルバム制作を始めた時、わたしは最初から最後までのスケジュールを考える必要がありました。

どの人にどの曲を手伝ってもらって、どういう形で録音を進めていくのか。


普段、1人で弾き語りスタイルをとっている本夛マキにとって、これは結構大変な作業でした。

しかし、やりたいことをやれる環境をくれたレーベルJUST LUCK RECORDS中西さんとも色々と相談しながら、なんとかスタートができたのです。


録音を始める前からアルバム全体の曲順も考えていて、1曲目に選んでいたのがこの「振り子は前を向いてゆれる」でした。


1曲目はこの曲以外は考えられなくて、最初から決めていました。


そして1曲目なら一番最初に録音するのが勢いがつく!となったので最初に録音する曲に決めたのです。


曲のイメージからやはりバンドサウンドにしたくて、考えに考えてドラムは沼澤尚さんにお願いしました。


沼澤さんはアナム&マキ時代からお世話になっている大好きな敬愛するミュージシャンです。

20代の多感な頃に沼澤さんのリズムとたくさんご一緒できたのは、今の本夛マキのリズムの礎となっています。いやもう勝手にわたしはそう思ってる!


快く引き受けてくださった沼澤尚さんとのレコーディングの時間。

この時間がアルバムレコーディングの最初になりました!

いよいよ始まったのです!


最初は、沼澤さんのドラム単体だけを録音をさせてもらおうと思ったのですが…。


沼澤さんが録音を始める前に言ってくださったのです。


『せっかくだからマキのアコギも一緒に録ろうよ!絶対そっちの方がいいよ!』


…なんですと?

ドラムとアコギの同時録音??


わー!

それは別の曲で高木太郎さんとやろうと思っていた録音方法でしたが…。

沼澤さんとはイメージをしていなくて、一気に本夛マキは緊張したのでした…。



沼澤さんからうれしすぎる提案をいただき、慌ててアコギ録音の(気持ちの)準備をした本夛マキ。

おかげさまで、アルバムの最初の録音は本夛マキのギターと沼澤尚さんのドラムの音の同時録音になりました…。


今こうして書いていても、震えるほどに嬉しい瞬間でした。

沼澤さんと、こうやって同時録音をやらせてもらうのはアナム&マキ時代にもなかったことだから。たぶん、なかったよね笑。


こう、色んな時間がギュッと音に込められた気がした。

これこそ、わたしがやりたかった録音でした。


沼澤さんはたくさんの現場でこういう瞬間を残してきている方だと思います。

アンテナがすごい。

こうやって本夛マキが音をご一緒させてもらったことは、更なる一生の宝物になりました。

改めて沼澤さん、ありがとうございました!



ということで、「振り子は前を向いてゆれる」の最初の録音は本夛マキのアコギと沼澤尚さんのドラムになりました。



そして別の日にまた、特別な時間が作られたのです。


この曲をバンドアレンジをすることを決めたので、ベーシストはどうするんだ、となりました。

本夛マキ、正直言いまして、、、ベースのことが一番わからない。

どうしよう…となっていたときに、あの方の名前があがったのです。


ちょうど木村充揮さんのライブでベースを弾きに来ていた中村きたろーさん。

きたろーさん!!

それこそアナム&マキ時代の命の恩人(!)である中村きたろーさん…。

大袈裟でなく、たくさんたくさん色んな時間をご一緒してきてくれたきたろーさん。


いろんな奇跡のようなタイミングとご縁のおかげで、きたろーさんがベースを弾いてくれることになりました。


もう、喜びに震えるしかなかったな。

本夛マキの録音できたろーさんに力を借りられるなんて、本当に夢のようでした。


しかも沼澤さんと一緒の曲。

こればっかりはアナム&マキ時代に感謝しかありません。

アナム&マキと沼澤さんときたろーさんの4人でライブをした宝物の時間。

あのときの強力なリズム隊のお二人。


まさかこんな時間がわたしに訪れてくれるなんて。

本夛マキをやっていて本当によかったと、心から思いました。


そして、あの頃から今にいたるまでずっと現役でステージや現場に立ち続けている、最高の先輩ミュージシャンのお二人の生き様にも感謝です。

敬愛しかない。

 

沼澤さんとの同時録音スタイルで喜びの味を占めた本夛マキは、きたろーさんとの録音でも、他の曲で同時録音にチャレンジしました。

幸せすぎたな…。



きたろーさん!!

本夛マキの録音に参加してくださり本当にありがとうございました!


そしてそして。


ゆっくりと大切に書きたかったこと。


それは、この曲でスライドギターを弾いてくださった「住友俊洋」さんのことです。


写真左が中村きたろーさん、右が住友俊洋さん!


この曲のバンドアレンジを思いついてから、一番最初に浮かんだのが住友さんのスライドギターの音でした。


以前、大阪難波にあるmusic bar S.O.Raで住友さんのバンド『T.Sumitomo Band』のライブを観た時、住友さんのギターがめちゃくちゃ格好良くて心が震えたんです。


その頃、アルバムアレンジを考えていたわたしは、住友さんにスライドギターを弾いてもらいたいと思ったのです。


住友さんはその時、闘病を始めたばかりでした。

ご本人や関係者のみなさまとも相談しながら、慎重に録音のお願いをさせていただきました。


住友さんご本人は録音をお願いしたら、とても喜んでくださった。


そもそも本夛マキと住友さんは、そんなに親しいわけでなくて時々お見かけするぐらいでした。

一緒にライブをしたこともなく一方的にわたしが拝見しただけ。


それでも住友さんにこの曲のギターを絶対弾いてほしかったのです。

住友さんのスライドギター以外、考えられなかったのです。


上手くご本人にお伝えできたか分からないのですが、わたしなりの情熱をお伝えして録音をお願いしました。



そうして、現場に来てくださった住友さんは最高の演奏をしてくださいました。


録音の最中にご本人は

「こんな感じで大丈夫かなあ!」と何度もおっしゃっていましたが。


本夛マキは震える気持ちを抑えながら、

『最高です!!住友さんにお願いして本当によかったです、ありがとうございます!』

とお伝えすることができました。


住友さん、お力を貸してくださり本当にありがとうございました。

おかげさまで最高の一曲になりました。



闘病をされていた住友さんは2022年5月23日に永眠されました。

『早く完パケを聴きたいわー!』とメールをくださった住友さんに完成した「from scratch」は届けられなかったのですが…。

録音のラフミックスは先にお送りすることはできて、ご本人にも聴いていただきました。

ご家族のお話では、本夛マキの録音に参加したことをとても喜んでくださっていたとのことでした。

そして住友さんはご自身のバンド『T.Sumitomo Band』の作品を最後に作られました。

このアルバムが本当に素晴らしくて格好良いんです。

本夛マキの「振り子は前を向いてゆれる」のギターを弾いてくれた住友俊洋さんのバンドの作品Just Like the good ol'music



サブスクもあります!

わたしは『from scratch』レコ発ライブを車で旅した時、このアルバムを何回も聴きました。

ライブ旅の道中、背中をたくさん押してくれました。

ドライブにもよく似合う格好良すぎる作品なんです。

みなさま、こちらもぜひとも聴いてくださいね。




沼澤尚さんのドラムと本夛マキのアコギ録音から始まり、中村きたろーさんのベース、そして住友俊洋さんの魂のスライドギター。

「振り子は前を向いてゆれる」この曲は、こんな風に録音されました。


最高の人たちのおかげで、最高のバンドサウンドを録音させていただきました。

こうやって、1曲目にして最初から最強最高の録音になったのです。


そしてそして『from scratch』の全ての録音を担当してくれたのはスーパーエンジニア川口聡さん。

川口さんなくしてはこの作品はない。

濃厚すぎる1曲目の録音をドーンと受け入れてくれた川口さんの存在は、本夛マキにとっては救世主でした。

改めてありがとうございますね!川口さーん!



素晴らしい録音の始まりの一曲になりました。

「振り子は前を向いてゆれる」この曲は幸せものです。


最高の演奏をしてくれたみなさまの瞬間を、本夛マキはこの曲と共に一生届け続けたいと思っております。


なんてったってアルバムの1曲目だから!

きっと一番聴いてもらいやすい曲なはずだ。


これからもたくさんのひとたちに聴いてもらいたいなあ。


長くなりましたが、2nd album「from scratch」の1曲目『振り子は前を向いてゆれる』の曲紹介でした。


曲の成り立ちとレコーディングの時間の話。


曲を作ってから録音に至るまで。

始まりと完成までの話。


アルバム制作の中でも、一番想いが強い曲を紹介できました。

本当に長い文章になっちゃった…!


他の曲もゆっくり書いてみようと思います。


お読みくださりありがとうございました!












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